ライトの建築

一昨日、構造計算偽造問題で証人喚問が行われました。
今回の事件を聞くたびに、フランク・ロイド・ライトの生涯をつづった「ライトの生涯」を思い出します。

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オルキヴァンナ・L・ライト著 遠藤楽訳 彰国社刊


この本は私の大好きな建築家フランク・ロイド・ライトの妻、オルキヴァンナ・L・ライトによるもので、ライトの業績、建築に対する熱意、考え方などが彼の生涯を通して書かれています。

その中で、ライトがまだ16歳の頃、午前中はウィスコンシン大学の工学部長、アレン・コノバーの工学のクラスに出席し、午後からは彼の事務所で働いていた時に目撃した事故のことが載っています。
この事故は後年、ライトの言葉によれば「この若いころの経験が生涯を通じて影響を及ぼした」というほど、衝撃的でした。
それは本文を引用すると『地下に巨大なコンクリートの柱があり、その上に内部の鋳鉄の柱があって、各階の床や屋根を支えていたのだが、その巨大な地下のコンクリートの柱が崩れたために鋳鉄の柱も崩れ落ちてしまったのだ。そしてもちろん、すべての床も内部の壁も皆一緒に崩れてしまったのである』というものでした。

内部の柱は崩れ落ち、すべての室内構造と一緒に地下室の巨大な瓦礫の山と化している建物とともに、けが人や死者、泣き叫ぶ人々をライトは目の当たりにしたのです。
原因は地下のコンクリートの柱の、ちょうど鉄の柱の立っていたその中心部が弱かったためでした。
今で言えば、構造計算を誤ったか、甘く見積もったかというところです。

この事件を通して、建築とは人の命を預かる大切なものであることが、ライトの頭から生涯はなれなかったのです。
だからこそ、地震大国日本の帝国ホテルの設計を依頼された時、ライトは何より地震に耐えうる設計を念頭に置いて設計したのでした。
その結果は、関東大震災においてガラス一枚割れず、人一人傷つかないという事実で彼の考えの正しかったことが証明されました。

この本を読んだ当時、設計・建築に携わる人々すべてにプライドと責任をもって仕事にかかわって欲しいと、心から思ったことを思い出したのです。
ライトが10代の時に目撃した悲惨な事故の記憶のように、私も阪神大震災での映像が記憶に今でもインプットされていて、建築が担っている人々の命を預かる器という役割をいつも忘れずにいたいと思うのです。

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愛知県の明治村に保存されているライトが設計した旧帝国ホテル中央玄関

Comments

No Responses to “ライトの建築”

  1. kim on 12月 17th, 2005 3:59 PM

    私のお友達は、阪神大震災で被災しました。
    買って半年くらいのマンションが「遺跡」と化してしまったと言います。
    でも、しっかりした造りだったみたいで、その後改築して元気に住んでいます。
    近くには、1Fがつぶれてなくなったマンションとかもあるそうです。
    建築家の方の責任は、確かに大きいですね。

    ところで、サンタさんのトナカイに扮しているねこちゃんは、むぎさんのお宅のお子さん?
    可愛いです。
    昨日の、頑張っている猫ちゃんの写真も、飛び切り可愛かったですね。

  2. むぎ on 12月 17th, 2005 5:30 PM

    kimさん
    トナカイ猫ちゃん、可愛いでしょう。
    でも、残念ながら、ウチの猫ではないんです。
    いつもお世話になっている素材屋さんからクリスマスバージョンをお借りしたんです。