みんなそれぞれに悪い

「悪い人が1人だけなら、こんなことにはならないはず」と、建築士の友人は言いました。
今、世間で騒がれている構造計算書偽造事件のことです。
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私も住宅雑誌に携わっていたころ、「欠陥住宅」について何度か取り上げたことがあります。
マンションやホテルなどのビル建築と木造住宅では、規模も金額も桁が違いますが、業界のブラックボックスみたいなところはあまり変わらないのでは、と思います。

「ローコスト住宅」といううたい文句で住宅が安く建てられる、という宣伝を時々見かけます。
安くなる理由は「独自のルートで材料を調達」とか「建築のシステムを合理化して無駄を省いている」とか「莫大な宣伝費、営業費をカット」などということが挙げられています。
でも「独自のルート」の詳細も「合理化された建築システム」の具体的なこともよくわかりませんし、営業マンもちゃっかりいたりします。

どの会社もそうだとは言いませんが、結局、もっともらしい理由よりも、住宅を実際に建てる下請け会社に建築費を安く言って発注したり(そうすると下請け会社は人件費などは削れないので、材料を安くて粗悪なものにする)、使う材料をはじめから粗悪なものにする、今回のように必要な柱の数を減らしたり断熱材を薄くするなどで材料費をケチるといったことでコストを削減しているケースも多々あるのです。

これだけ見ると、そういうインチキローコストの住宅を売る会社が悪の根源というふうに思えますが、そんな粗悪な住宅を建てる片棒を担ぐ人たちがいなくては、実際に住宅は建ちません。
たとえば下請け会社。そんな住宅は建てたくない、と断ればいいはずですが「今は仕事がないから、みすみす欠陥になりそうだとわかっていても断れない」現実もあるのです。
とにかく会社が不渡りを出さないために、収入を切らさないように自転車操業的経営をしている建築会社はたくさんあります。会社がつぶれたら、従業員が路頭に迷いますからね。

今回の事件が、ここで書いたようなケースかどうかはわかりません。
でも、ただ1人の悪人が悪さをしてがっぽりもうけていて、ほかの人たちは悪くない(もちろん、欠陥住宅に入居した人はまぎれもなく被害者ですけど)という単純なものではないと思います。

前出の建築士の友人は、私が建築のことに関してもっとも信頼している親友でもあります。
その彼女の言った
「建築士は医師と同じく人の命を預かる重要な国家資格。それなのに、今回の建築士はその資格の重みをまったく感じていない。
また、建築士でなくても、建築に携わるすべての人たちが自分たちの仕事に人の命の重みを感じ、誇りを持って仕事をしていたら、絶対に今回のケースのような図面には疑問を持つはずだし、いくらお金がほしくても仕事は断るはず。
結局、ある建物を建てるに際し、かかわっているすべての人の感覚がずれていると、出来上がった建物は決してよいものにはならないと思う」
ということばに、欠陥建築が生まれる原因を見たような気がしました。

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画像は今回の記事とは関係ありません(photo by 写真素材-フォトライブラリー様

Comments

No Responses to “みんなそれぞれに悪い”

  1. kim on 11月 25th, 2005 7:41 PM

    最後の、建築士のお友達の言葉、重みがありますね。
    命を預かるお仕事だったのですね。
    でも、今回の事件を見て、本当にそうだと思いました。

  2. むぎ on 11月 25th, 2005 11:30 PM

    今回のことも「結局誰が一番悪いのか」ではなく、かかわったみんなが、事の重大さから目を背けているということが言えるのではないかと思います。
    そして、そのことと同時に、実際に被害にあった人たちが安心して住める住宅に一刻も早く移れますように、と思います。