納豆箸牧山鉄斎

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札幌在住のハードボイルド作家、
東直己氏の異色短編小説のタイトルです。


とある家庭の箸立てに立てられた箸たちの
納豆かき混ぜ箸という過酷な運命を巡って
彼らが翻弄されていく葛藤を描くという
かなりシュールな小説です。

何しろ、箸たちに名前があって、
侍ことばみたいな話し方で会話しているという、
???な、ほんとにシュールな展開なのですが、
それが私のツボにぴたりとはまってしまいました。

「箸は、箸立てに立てられた時に、魂を得て、
 同時にそれぞれの名と家族の記憶を受け継ぐ」
のだそうです。

箸たちは、人間の視点で世界を認識し、
そして人間に仕えるために箸族の記憶を受け継ぎ、
切ないほど真心をこめて、人間に仕えるのです。

箸たちにはなぜか名前がついています。
小説のタイトルである牧山鉄斎は一膳100円の小豆色の塗り箸。
佐藤健一宅に仕えるため、魂を得ました。

このお宅には鉄斎より先にお仕えしている箸たちがいて、
たとえば主人、健一に使えているのが関根谷惟継。
奥さんの貞子に仕えているのが明智宗矩といった具合。
さらに木製のジャムスプーンのウエィライト・ホリフィールドや
鞘つきの果物ナイフ、マウントバッテン・エペドリマイヤーなんてものや、
「遊軍」の白木の小ぶりの箸や割り箸などもいます。

もう、この設定だけで私のツボに入りまくり・・・

この後、彼らは鉄斎が何のために魂を得たのか
=佐藤家での箸としての仕事の役割
について語り合っていくのですが、
どうも、少し前までここにいた「秀じい(本名・梅原秀次郎)」の後任ではないか、
そして秀じいの役目とは「納豆かき混ぜ箸」であったことなどが語られます。

箸たちにとって「納豆かき混ぜ箸」というのは過酷な、
そしてとても嫌な役目らしい。
試練でもあるらしい。

さらに箸の世界にもランクがあるらしく、
割り箸は「割り箸ごとき」と思われているのではと
かなり屈折した心を持っていたり、
塗り箸といっても、たかが100円箸と漆の塗り箸では処遇も違うとか・・・

そういったことが大真面目に語られ、
物語が進行していくのが面白くて、
かなり気に入ってしまいました。

さて、牧山鉄斎は危惧したとおり
納豆かき混ぜ箸になってしまうのでしょうか・・・
意外な結末が待っています。

この小説は東氏の「ライダー定食」という
短編集に収録されています。
このタイトルに魅かれて読み始めましたが、
「ライダー定食」自体は途中で結論がわかってしまいました。
あっという結末の複線だったのでしょうが、
怪奇・伝奇小説好きの私には
案外ありふれた展開でした。

この短編集には他にも5つの短編が収められていて、
それぞれにシュールなお話で楽しめました。

azumanaomi.jpgライダー定食(光文社文庫)

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